岡村道雄『旧石器遺跡「捏造事件」』2010 山川出版社を読む

藤村新一が起こした旧石器遺跡捏造事件。あの事件からもう10年も経ったのかという気がする。
当時、業界関係者はここぞとばかりに原因者(遺跡発掘費用を負担する人々)からこの件に絡めて嫌みを言われたことだと思う。自分もその一人だった。正直、大変だった。
その後、平成14年だったか、奈文研の研修を受けた。その際の夜の情報交換会で、岡村さんに会って話をしたこともあるが、事件後の影響からか人とは距離を置いている印象だった。
本の中身としては、著者の立場(捏造には無関係)を明らかにし、それを見抜けなかった自分への懺悔の書としか言えない。
考古学の方法論を悪意を以て利用すれば、容易に捏造が可能であるという「事実」を歴史に残したという意味でもこの捏造事件は意味があったと言えよう。
ただ、今後に生かしていかねば前期・中期旧石器研究の何十年間がまったくの無駄になってしまう。それだけは避けたいものだ。
著者も後書きで言ってるが、この事件について藪蛇になるから、本を書くことはないという意見もあった中、よくぞ書いてくれたと思う。
ある意味、事件後の10年間もっとも苦しんできた筆者だからこと書ける内容もあった。これを更に検証の材料として、未来に向かって研究が進むことを祈る。

カテゴリー: 読書 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です